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「長い人生の1年くらい、惰性で働いてなにが悪いの?」

by ほしゆき

「え」

と、思わず顔をあげた。

タイトルの言葉を私に伝えたのは、生真面目で完璧主義である母。

独立して1年、この生活にも慣れ、いろいろなことが器用になってくる。

緊張感がなくなっていく自分に、嫌気がさしていた。

このままじゃダメだ。

慣れてきたら次のステージに進まないと。成長しないと。むしろ、慣れるくらいまで同じところに留まっていてはすでに怠惰ではないか。

そういう感情が渦を巻くわたしの胸に降ってきた、助け舟のような言葉だった。

「だ、惰性って……」

「ウダウダしながらそーゆー時期が1年や2年続いたって、長い目で見たらそんなの大したことないよ」

「かっこわるいじゃん。時間を無駄にしてる気がするし」

「無駄だったかどうかは未来のあんたが決めることで、今のあんたが決めつけることじゃないでしょ」

たしかに。

「何十年も同じ職場で働き続けて、嫌々働いてた時期もあるし、惰性でしかなかった時期もあるよ。でも私はそれが、無駄だったとは思ってない」

どうして?

という言葉は飲み込んだ。

答えを聞いたところで、キャリアに差がありすぎる私に理解できるわけがない。やってきた人にしかわからないことだ。

存分に、迷ったり、逃げたり、遊んだりしたところで、この先何十年もつづいていくであろう人生の尺を考えたら、どうってことない。

例えば今の仕事を全部捨てて、

世界放浪の旅に出たとしても

次のキャリアに繋がる可能性は存分にある。

安定なんてどこにもないから

だから不安はつきものだけど、なにを選んでも不安が消えることなんてない。悩みも。迷いも。

真面目に働き続けることだけが、時間を無駄にしない、ということでもきっとない。

目の前に見える成長だけが、理想的な成長だとは限らない。

私たちにはいつも、本当はなんにもなくて、すべてがあるんだよなぁ。

それを、思い出す言葉だった。

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