LOG IN

女の子が急に可愛くなるとき。

by ほしゆき

少し会わない間に、友達の女の子が可愛くなっていた。

そんなことが時々ある。

『女の子が可愛くなる』という現象に、対外深く関わっているのは『恋愛』だ。

アパレルスタッフは、そんな女の子たちの「乙女心」を感じ取る瞬間が1日に何回もあるもので

それは、

「可愛いお洋服を買いたい」「ちょっとイメチェンしてみたい」という女の子の心には、恋愛が絡んでいることが多いからだ。

好きな人に振られてしまったことが、悲しいとか、苦しいとか、悔しい。

もっと可愛くなって、後悔させてやるんだ、と

今まで大切にしてきた思い出たちを手放して小さく泣く夜が、ある。

一人でいるのがつらくて、友達とヤケ酒飲んで体力の限界までカラオケオールするような夜がある。

みんな、恋愛している中でそんな日があってそんな日を乗り越えて

お買い物しに駆け出してきたりする。

「明日彼氏と久々にデートできるから気合入れてお買い物しに来たんだ」なんて言わなくても

「明日お出かけなんですか?♡」と聞いた時のはにかみ具合で、そんな嬉しさはすでにダダ漏れになっちゃっているような瞬間が女の子にはある。

「可愛くなりたい」と思う女の子の姿は

「ドキドキワクワク!!!!」なんて物理的な行動で表されるものでなくとも

最強にスーパーウルトラエネルギッシュで、素直で、なにより可愛い。

「前はこうゆうのよく着てたんですけどね、」って困ったように切なげに笑ってみたり

「でも彼氏はスカート派だからタイツ買わなきゃいけなくてー!」と迷惑そうな口調なのに嬉しそうな笑顔だったり

お洋服を見る女の子の瞳や表情はとっても繊細で、多様な色を見せてくれる。

そのどれもが

「楽しい恋愛の渦中にいる」わけではないことを、知っている。

だから今、このお店の中にいる時は

私が一緒に「可愛くなりたい」って思いを試行錯誤できる時はせめて、「楽しい」と笑えたら。と、思う。

先日、私と同じピンクのトップスを試着したいと言ってくださったお客様が居た。

試着室に向かいながら他愛もない話をして、

「ピンクお好きなんですか?」と聞いたら

「実は明日、好きな人とデートするんです。だから、女の子らしい格好したいなって、、、、。」

えへへ、と完璧な照れ笑いをセンター分けされた前髪で隠しながらつぶやいた。

こんな時

アパレル店員をしていることを最強に幸せに思ったりする。

こんなに可愛い女の子の状態が溢れた空間が職場だなんて天国である。

「そうだったんですね!!ドキドキしますね~!!!」

恋バナになると昔から知り合っていたかのように盛り上がれるのは女子特有の文化である。

私たちはまるで友達にでもなったかのように「あの形が」「あの色が」「あのニットの可愛さが」、、、、なんて会議を繰り広げて何枚ものお洋服を並べた後に

最終的に、ピンクのニットか、ワンピースか、という二択で悩んでいた。

「お姉さん、どっちがいいと思いますか?!」

選べなくて困った様子のお客様に、私は「ワンピースも可愛かったですけど、ピンクがお似合いでしたよ」と言うと、もう一度そのニットを着てみて全身をチェックした後に、鏡越しのわたしに

「このニット着て行ったら、、、、、告白うまくいくかなあ、、、」

と呟いた。

「えっ!」と思わず声を出してしまった。

彼女は明日、好きな人に想いを伝えようとしていたのだ。

、、、、そっか、

そうだったのかぁ、、、、。

前から仲が良かったという積み上げてきた関係性において、

一着のお洋服が「好き」か「そうじゃないか」なんて感情を白黒つけさせる効力を持つことはないと、彼女は知っている。

どちらかの洋服を選べば確実に成功して

どちらかの洋服を選べば確実に失敗する、なんて方程式がないことを知っている。

それでもこの二択で悩んだ末に答えを導き出すのは

どちらが保温力が高いか、とか、お手入れが簡単か、なんてことではなく

今この場に居ない「好きな人」が

どちらを身に纏った自分を「可愛い」と思ってくれるのか。ということであり

どちらを身に纏った方が自分に自信をくれるだろうか。ということ。

もしも好きな人が「白いニットを着てる女子が好き」と過去に言っていたなら

こんな二択は秒で崩壊して、目もくれていなかった白いニットを彼女は買うのだ。

プロフェッショナルからの「最高に似合ってる」であろうと

昔から自分をよく知る幼馴染からの「それ可愛い!」であろうと

恋をしている女の子にとって

好きな人からの「可愛い」以上に最強の決定打はないのである。

「このピンクのニットにします。」

と鏡を見ながら笑った彼女の明日が、素敵なものになれば良いと願いながら

ピンクのニットを綺麗に包み、

「また、お待ちしていますね」と見えなくなるまで背中を見送った。

震えそうな指先でそのニットに袖を通す日の朝が

いつもより少しだけ、凛と晴れた日であれば良いと思う。

OTHER SNAPS